教育改革の追い風を受け、世にない新たな教育コンテンツを生み出す

学習指導要領の改定により、高校の必修科目の一つである「総合的な学習の時間」は、2022年度から「総合的な探究の時間(以下「探究」)」へ名称変更されます。

知識のインプットが主流だった学習から、自ら問いを立てアウトプットする学習へ。今の時代は、まさに教育の転換期と言えるのではないでしょうか。

「未来教育創造室」で室長を務める木曽原は、この機運を「教育と国を変えるラストチャンス」だと語ります。「探究」の教材制作におけるトモノカイならではの取り組みや未来の展望を、木曽原に聞きました。

目次
「普通じゃない」転職をしたいと、金融・エンタメ業界を経てトモノカイへ入社
社会への価値発揮を目指せる「探究」の可能性
業界の慣習にとらわれない教材制作を実現
教材制作にとどまらず、シームレスな「高大接続」を目指す

「普通じゃない」転職をしたいと、金融・エンタメ業界を経てトモノカイへ入社

――入社前の経歴を教えてください。

普通なら選ばない道に進んでみたいと、新たな業種・職種へ常に挑戦し続けるキャリアを歩んできました。

新卒入社した損害保険会社で営業職を経験したのち、次は「売れる仕組み」をつくる側に回りたいとマーケティング職に転身。業種もがらっと変え、金融業界から一転してエンターテインメントの世界に飛び込んだんです。

転職先のコナミグループには15年間在籍し、持株会社の経営企画部長や子会社の代表取締役などの経験をさせていただきました。その後、トモノカイに入社したのが2016年4月のことです。

――異色の経歴ですね。トモノカイに出会ったきっかけは何でしたか?

転職活動中にエージェントから「面白い人がいるから会ってみてほしい」と紹介されたのが代表の徳岡だったんです。この出会いが、入社の決め手になりました。

知名度も実績もまだほとんどない会社が「教育の再設計」で世界を変えたいと理想を掲げている。正直、無理ゲーだと思いましたね(笑)。ですが、同時にその未知数さにとても惹かれたんです。

また、これまで全く関わりがない業界でしたが、前職で多くのメンバーをマネジメントする中で教育に対する疑問も感じていました。

ビジネスの世界では、学歴が高い人が必ずしも活躍できるとは限りません。学生時代だけでなく社会に出てからも活用できる教育が必要なのではないかと、役員陣と意気投合しました。まさに新学習指導要領の「探究」につながるような構想を、当時から話していたんです。

社会への価値発揮を目指せる「探究」の可能性

――「未来教育創造室」での具体的な取り組みについて知りたいです。

今の名称になってからまだ半年ほどの組織です。「探究」の教材制作や、新たな教育サービスの企画開発に取り組んでいます。教材制作担当が2名、マーケティング担当が1名おり、4月からは新卒社員も加わりました。(2021年4月時点)

私が入社した2016年は、新学習指導要領の骨子ができ上がろうとしていた時期です。まずは教育委員会様などに飛び込みで話を聞きにいくなど、学校教育の仕組みを知るところから始めて、事業内容やサービスのあり方を固めていきました。

――教材のテーマである「探究」とは、どんな科目なのでしょうか?

シンプルに言うと「自ら課題を設定し、情報収集の後、整理・分析して成果物を発表するプロセス」を実践していく科目です。

「社会への価値発揮」をゴールに、知識・技能だけではなく、思考力・判断力・表現力や人間性なども身に付けていくことを目的としています。「探究」には、今の教育が抱える課題を解決できる大きな可能性があると感じています。

――大きな可能性と言うと…?

今までの教育は、知識や技能をインプットすることがメイン。習得状況を確認するテストの点数や試験結果によって偏差値が測られてきました。

ただ、社会に出るとそれまで学んできた知識や技能だけでは通用せず、急にロジカル・シンキングや経営、マネジメントのスキルを習得する必要も出てきます。「探究」の授業は、そういったコンピテンシーを中学・高校から学べる場になります。

「勉強がつまらない」と言う子どもは多いです。ですが、ゲームをクリアするために攻略法を知ろうとしたり、編み出したりするのと同じように「本当に将来の役に立つ」とモチベートされれば、きっと勉強が楽しくなると思うんですよね。

業界の慣習にとらわれない教材制作を実現

――次に、教材制作の取り組みについて詳しく教えてください。

トモノカイでは「探究」活動のステップを解説する教材と、SDGsや地域活性など個別の「探究」テーマの理解を深める教材の2種類を制作しています。

生徒さんの「探究」活動の助けとなることはもちろん、現場の先生方にとって授業設計をしやすい点も教材の特色です。

教材制作は、学習教材の出版社や教育コンテンツの制作会社など、歴史と実績を兼ね備えた競合企業が多い領域。トモノカイは後発なので、独自性を出せるように工夫を重ねつつ取り組んでいます。

――どのような工夫があるのでしょうか?

違いは大きく2つあります。1つ目は、教材制作の流れです。一般的には複数名の専門家に分割して執筆を依頼し、それを制作会社がまとめて1冊の教材が完成します。

一方トモノカイでは、教材のコンセプト決めから大枠の企画・構成までを自主制作しています。自分たちでプロトタイプまで完成させ、監修の先生に見ていただくというつくり方です。

2つ目は、教材内容の切り口です。「既存の教科での学びの深まり」だけではなく「社会で価値発揮する」がゴールなので、社会で必要となるエッセンスも取り入れるようにしています。例えば、先ほども話に出てきた、ロジカル・シンキングがその一例ですね。

すでに世に出ている内容をそのまま並べて掲載するのではなく、自分たちなりに解釈してレベル調整をしながら編集していけるのは、教材制作におけるトモノカイならではのやりがいでもあります。

――これまでの慣習とは異なる制作過程によって、独自性を生み出しているんですね。

正直、トモノカイは教育業界の老舗企業には知名度も規模も劣ります。

ですが「探究」の教材は、新学習指導要領の編纂にも深く関わっている國學院大學教授の田村学先生に監修していただいているんです。教育業界の権威に教材のビジョンを共感してもらえているのは、事業において大きな励みとなっていますね。

教材制作を通じて、教育業界全体にトモノカイならではの新しい風を吹かせられるのではないかと感じています。

――独自の教材制作において、どのような視点が必要になりそうでしょうか?

「教育業界・教材とはかくあるべき」にとらわれない人と一緒に教材をつくれたら嬉しいですね。

現代で支持されるあらゆるプロダクトは直感的なデザインが多く、取り扱い説明書を読み込まなくても操作できるものが多いです。となると「教材は必ず紙であるべき」という前提すら疑わしいのではないでしょうか。新しい発想で教材制作をしていけたらと思います。

教材制作にとどまらず、シームレスな「高大接続」を目指す

――「未来教育創造室」の展望を教えてください。

最終的には「探究」活動のプロセスそのものがきちんと評価され、大学に進学できる「高大接続」を目指しています。つまり「探究」による、新しい大学との出会い方やつながり方の創設です。

そのために、まずは教材制作でトモノカイの存在感を示し、企業や大学との連携を深めていきたいと思っています。実際に、SDGsをテーマにした教材を朝日新聞社さんと共同でつくる取り組みも始まりました。

今後は、各所と協働してBtoCの月額制教育サービスやオンラインゼミの提供など、新しいコンテンツも生み出していくつもりです。

新学習指導要領は「社会に開かれた教育課程」と言われています。2020年代、ようやく社会とシームレスな教育の仕組みがつくられつつあると感じています。

これは、明治維新に匹敵する歴史の転換点になり得ると私は思っています。逆に、この教育改革が成功しなければ、子どもたちや国の未来も明るくはありません。

社会に価値を発揮できる教育。それが実現できる未来をこの目で見たいと思いませんか? この時代に居合わせ、教育の変革を推し進めていける一員になれることは間違いなく楽しいはずです。